vol37.MovableTypeの功罪

初めに断っておきますが,MovableTypeは大変便利に活用させていただいています。お客様の提案に使うことも多々有ります。ただ,MovableType(それ以外にもブログ全般)が出てくることによって,便利になる反面,残念なことも起きたので,それについて書きたいと思います。

10年前。私が初めて自分用のパソコンを手に入れた頃,まだMovableTypeはもちろんブログ(blog,weblog)という言葉がありませんでした。

自分の意見をネットで発信したい人はどうしていたか?

当然個人の"ホームページ"を1から作成していました。

ジオシティーズ,tokutoku,infoseek,gaiax,cool online……広告が邪魔にならなくって,容量が多く,できればCGI(Perlとほぼ同義語でした)が利用できる無料サーバスペースをこぞって探していました。

画像素材やCGIの配布も盛んで,KENT-WEB,TackeysRoom,ネットサーフレスキュー,CGI ROOM(いずれも今でもご活躍されている方ばかりですが)などのCGIをダウンロードしてきて,自分好みにカスタマイズすることで,制作者がPerlなどを覚えて行きました。グラフィック素材の配布も盛んで,ApeSkinなどのスキンを作成して配布,などは私も手がけていました。

2001年4月に新卒で印刷会社のweb制作部署に就職し,会社員としてweb制作を初めた年に,MovableTypeが登場し,同時にweblog,blogという言葉ができ広まりました。

ありがたいことは,それまでテーブルレイアウトがほとんどだったweb制作で,MovableTypeの流行とともにCSSで組む,ということが普通になって行きました。トゥーウェイズでも新規制作について2003年からはCSS組みに移行しましたし,世の中の流れ的にも2005年〜2006年くらいからCSSでのコーディングがメインになって行きました。現在テーブル組の会社は3年以上webサイトを放っている,webに対する意識の低い会社だと判断できるでしょう。

ただ,残念なことに,MovableTypeの個人ユーザーが増えるにつれ,個人の"ホームページ"がどんどん衰退して行ったのです。

個人で1から作成するのではなく,システムに乗っかって,部分的に作る,ということが主流になって行ったのです。個人サイトを作成している人だったら一つは参加していただろう,ウェブリングのウェブリングJapanも2007年でサービスを終了しました。

ブログ,確かに便利です。会社からでも,家からでもパソコンか携帯があれば更新できます。ただ,楽な分,個性の無いサイトが量産されてしまいました。今ではブログさえも自分で設置するのではなく,ブログサービスを利用したり,ブログサービスさえ利用せず,投稿サイトやSNSに自分のアカウントを作成してその中だけで利用する,などの流れになってきました。

正直,この流れはつまらない!です。
個人ホームページ全盛期の時は,玄人はだしのアマチュアも沢山いて,趣味が高じて仕事に,という人が多かったのです。趣味を突き詰めてやっているうちにスキルが高じて仕事をするようになった(私もそのうちの一人),とか,未経験で応募する人でも,個人サイトで鍛えて仕事レベルの知識をきちんと持っていたり,プロ並みの高レベルの制作をしている,ということが多々あったのです。私は就職時に7サイトほどさまざまな種類のwebサイトを作成,運営していて,現在でも5サイトは残っていますが,2〜3サイト作っているという人は珍しくありませんでした。

今では,素人のレベルと,プロのレベルが乖離してしまいました。一件綺麗なwebサイトでも,ブログのテンプレートを利用しただけであったり,基本はテンプレートで一部カスタマイズしたのみの場合がほとんどです。個人で1からホームページを作ってるという人がとても少ない。webデザイナーになりたい,というのにwebサイトを作ったことが無いという状態であったり,ネット上で「webデザイナーになりたいんですが,何から勉強したら良いんですかー?」なんて平気で聞いている人がいます。(何かをやる前に他人に聞く人には無理,と断言しておきます。)

プロが作る企業サイトなどは,ブログのシステムを利用することはあっても,基本的にオリジナルで作ったものを当てはめて行く,というかたちであったり,部分的に利用するという形で,システムより内容ありき,です。量産部分はシステムを使うこともありますが,それはMobableTypeなどが出る前から変わっていません。(MovableTypeが出る前から企業サイトでCMSは導入されていました。)

ただ,当然ブログだけが素人と玄人の差を作った訳ではありません。
ブログの流行による個人サイト衰退と同時に,どんどんとweb技術は進化してきました。それによってますます素人と玄人の差が開いてきて,素人から玄人への参入が難しくなってきました。webという業界が成熟してきたことの証でもあるのでしょう。そのうち工学部の情報学科あたりに専門コースが当たり前の様に設置され,そこで専門的な勉強をしないとなれない,位になって行くのでしょうか。

この10年の移り変わりを見てきたものとしては,嬉しくもあり,少し切なくもあるwebの時代の変化です。

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